社長の漆塗り作業風景

昌栄仏壇と職人

昌栄は、木と漆にこだわりをもって仏壇の製作を行っています。
木材は県内外の材木屋より直接丸太で仕入れしています。材木を購入後、作りたい製品の各部材の厚さを考えながら、製材してもらい、自社倉庫で割れ止め処理を施した上で乾燥・管理します。
塗りはカシュー漆と本漆どちらの製品も製造していますが、現在昌栄では本漆による仏壇製作に力を入れています。一般的に仏壇・仏具の塗りに使われる人造漆・代用漆と言われるカシュー漆は、本漆とは異なり吹き付けで塗ることができるため生産効率を上げることに繋がり、広く一般に仏壇が普及することに貢献しました。しかしながら、手で漆刷毛を使い塗り上げた仏壇は、カシュー漆やウレタン塗装とは違う艶と迫力を生みます。また、欅を木地呂塗りで仕上げた仏壇は、年月の経過によって色が咲き、木目が明瞭に変化していきます。その変化を楽しむことができるのも昌栄仏壇の一つの価値だと考えております。

木材

材料となる材木・木材は、主に丸太で仕入れしています。当社では、仏壇の材料として主に欅・栗・栓・黄檗(キハダ)・黒柿などを仕入れしております。
原木で材木を購入するのは、皮をはいで製材してみるまで中の状態(虫喰い、腐れ、空洞)が分からなかったり、乾燥の過程で割れやひねりねじり等の狂いが生じたり、購入後すぐには使えないといった様々なデメリットやリスクがありますが、ここにしかなく気品高い製品を生み出すためには必要な製造工程の一つになります。
購入後、仏壇の予定する部材に合わせて製材します。この時点で仏壇のどの部分にどの木材を使用するかを考えながらの作業になりとても緊張する場面です。 製材後に割れ止め処理を施したあと、自社倉庫にて自然乾燥させます。

当社倉庫の木材乾燥保管場

設計

昌栄が製造する仏壇・仏具はすべて社長山口昌平の手によって設計図面が起こされます。昌栄の仏壇に責任と誇りもち、そのこだわりを一品一品に魂を込めるように図面を引きます。
決して職人任せにはせず、口では言い表しようがない微妙なラインや彫り、さらに宮殿や金具のデザインの意味を全ての職人に確実に伝えるために、設計図面を間に挟んで納得いくまで意見の交換・打ち合わせを行います。
一つの仏壇が出来上がるまでには、多くの職人の匠の技と経験が注ぎ込まれ、流れ作業にはない真心こもったお仏壇が形作られます。出来上がったお仏壇は、当社にとって一品一品に思い入れがあり、完成したお仏壇を前にいつも感慨深いものがあります。
今までにはない新しいものへの意欲を持ちながら、後世に残り受け継がれていくような仏壇をデザイン・製作することは苦労もありますが、完成した仏壇を想像しながら創造することは非常に楽しい時間でもあります。

設計図面

天井龍

昌栄が設計・製作する仏壇にはその証としてすべての天井に五爪の龍の彫り物つけさせて頂いております。
当社社長が昭和の時代に中国へ旅行に行った折にガイドから、「神の子は9人いる。その9番目が皇帝陛下。その化身が五爪龍なのだ。」という話を聞きました。その話を聞いたときより「天井龍」を心の中にあたためてまいりました。
仏壇を買われる方は、親なりが亡くなられて、葬儀を行い、親孝行の意味もあり仏壇を買われるのだと思います。この行いは、1人の人間の終わりであります。しかしながら、我が社としてはこの時点からお客様との関係が始まり発展しなければなりません。五爪の龍によりお客様のご先祖様を守っていただき、又、お客様の発展を願い、当社との関係もますます発展、充実を願って、取り付け荘厳しております。

昌栄の仏壇天井に設置される五爪の龍

木地

仏壇の木地

仏壇づくりの原点ともいえる木地づくりを担うのが白木師(木地師)です。図面をもとに打ち合わせを行い、当社の持つイメージを理解してもらい、実際の製作に入ります。
木地工程は仏壇作りの基本であり、白木師さんには常に安定した技術が求められます。また、各部の曲線に合わせて工具自体も手作りします。
作業は図面をもとに各部の巾、高さ、奥行きを割り出し、一本のものさしを作ることから始まります。その寸法に合わせて木取りしていくのですが、木材のどの部分をどこに使うかが、仕上がりを左右します。その中で木を活かし、無駄を出さないように木材を切り出すのが白木職人の腕の見せ所でもあります。また、塗りの厚みや塗り工程のしやすさ、修繕が必要になったときの分解しやすさなど他工程や最終的な完成のことを考慮しながら作業を進めていきます。

宮殿

仏壇の宮殿

仏壇に納められる宮殿は、およそ270年の歴史をもつ山形仏壇において秀麗で繊細な技術が輝る部分であり昌栄仏壇の見どころのひとつです。その仏壇の内陣に取り付ける屋根、桝組(宮殿/空殿)を製作するのは宮殿師の仕事になります。二重屋根宮殿などに代表される、華麗、荘厳で繊細な技術は、山形仏壇が誇る大きな特色のひとつです。宮殿師はその伝統技術を守り、発展させて来ました。
宮大工さんは何人もの職人が集まり1年もしくはそれ以上に長い月日をかけて社寺建築を完成させます。それに対して宮殿師はその人生において一人で数えきれないほどの屋根を作り上げていきます。屋根の反りやバランスはその経験と蓄えられた深い知識と共に変化しながらより一層美しいものへと進化していきます。

彫刻

白木の状態の彫刻

彫刻はその構図や表現で仏壇全体の印象をも左右する極めて重要な部分であり、この仏壇の要所要所に施される彫刻は彫師によって製作されます。材料は、榀、松、檜、欅などが使用されます。
日々の生活の中で接する山形の自然の美しさを心に刻み、それを造形へと反映させることで理想とする彫りを追求します。

塗り

昌栄社長山口昌平による漆塗り風景

当社では一般的に仏壇・仏具の塗りに使用されるカシュー漆やウレタンによる塗装のものだけではなく、本漆を使用した高級仏壇を製作しております。
当社では本漆を塗る場合には、山形県で採れる欅や栗などの杢目を活かすために拭き漆または木地呂塗りで製作致します。
当社社長山口昌平は、漆塗りの作業を幼いときから見て育ち漆の持つ深い輝きと暖かみに惚れた一人です。社長自ら自分が設計した仏壇をどのように色付けしていくか、金箔をどのように施すかなど常に最終工程まで考えながら漆塗り作業に取り組みます。
漆の乾燥には温度だけでなく、湿度が重要です。そう思うと漆は、生き物であると感じます。木地を丹念に研磨し、目止めの錆漆付け、漆塗りと研ぎの作業を何度も繰り返す地道な作業は決して焦ってはなりません。 最終工程の胴摺りと呂色磨きは、漆の繊細な部分を最大限生かした手法と言えます。胴摺りや呂色磨きは自分の手の感触によって磨き上げ、前工程の塗と研ぎの地道な作業が花開く工程です。
ご来店された方には漆塗りの作業部屋と塗った部材を乾燥させる室などの設備を実際にご覧頂くことができます。

当社で仏壇仏具の製作に使用する漆は、京都の鹿田喜造漆店より仕入れております。粘度や色などその他細かい点までこちら要望に合わせて調整して頂いており非常に助けられております。(鹿田喜造漆店より許可を頂いてHPへのリンクの掲載を行っています。)

錺金具

仏壇の随所に使われる錺金具は決して派手に目を引くものではありませんが、仏壇全体に重厚感と立体感をもたらします。
白木師が木地を仕上げたところで、金具を施す場所の寸法取りをし、打ち合わせの上、大きさ、文様等を決め、金属板を型取りして一枚一枚手打ちしていきます。職人の魂がこもった良い金具は仏壇の風格を引き上げ、厳かな雰囲気を与えてくれます。 また、沈金の黒金具は山形の金具師にしか出せない独特の色とバランスによって仏壇を荘厳でありながら落ち着いた雰囲気のものへと変えていきます。

山形の金具師が製作する沈金黒金具

箔押し(金箔)

昌栄社員の山口晶子による箔押し風景

昌栄の仏壇仏具の箔押しは、当社社員山口晶子によって行われます。
山形仏壇はもともと金仏壇の産地ですので、金箔をふんだんに使用した豪華な金仏壇を作ることが多いです。しかしながら、昌栄では金箔を押す箇所を吟味し、程よい金箔の輝きを施した仏壇を製作しております。それが当社の主力商品でもある幸太郎仏壇、裕太郎仏壇となります。程よい金箔の具合が欅などの木目を引き立たせ、より効果的に金箔の魅力も伝える事に繋がり、現代の住宅にも調和したバランスのとれた仏壇になっています。
来店された方には箔押し作業またはその作業部屋を実際にご覧頂くことが可能となっております。

当社で使用される金箔はすべて石川県金沢市にある作田金銀製箔株式会社/株式会社金銀箔工芸さくだより仕入れております。400年以上受け継がれてきた伝統技法で高品質の箔を製造販売しています。(作田金銀製箔株式会社/株式会社金銀箔工芸さくだより許可を頂いてHPへのリンクと写真の掲載を行っています。)

仕組み(組み立て)

仕組み(組み立て)は、当社社員が行っております。
この仕組みは数十年~100年後の修繕・修理(塗り替え)のことを考慮して分解しやすいように行います。
当社では錺金具の取り付けにおいて本金メッキ加工されたステンレス釘を使用しています。従来仏壇仏具の金具の取り付けに使用されていた真鍮釘は2年ほどで錆びて劣化しますが、本金メッキ加工されたステンレス釘は10年以上の年月が経過しても綺麗な輝きを維持します。

昌栄社長山口昌平による仕組み風景
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